本研究では、第VIII機能を持続的に増強する抗体による新規止血治療法に関する基礎的知見を得ることを目的に平成20年度では、抗第VIII因子モノクローナル抗体作製と第VIII因子活性化機序および第VIII因子活性評価法を中心に研究を実施した。各種モノクローナル抗体をスクリーニングして、第VIII因子活性増強作用を有する抗体を検出した。 1)抗第VIII因子モノクローナル抗体作製:抗体はヒト第VIII因子を免疫したマウスの脾臓細胞とマウスミエローマ細胞P3U1細胞とを融合させHAT培地で選択培養して作製した。第VIII因子を固相化したELISAにより測定し、抗第VIII因子抗体活性のあるwellを検出した。さらに、限界希釈を行い、抗体活性陽性クローンを得た。抗第VIII因子結合能を有する抗体の第VIII因子活性に対する阻害および活性増強作用の有無について、活性化部分トロンボプラスチン時間および凝固1段法による第VIII因子活性測定によりさらにスクリーニングを行った。1抗体が正常血漿と混合したところ凝固時間の短縮が見られた。さらに、第VIII因子(1nM)を抗体と混合して第VIII因子活性を測定したところ、本抗体は第VIII因子活性を〜1.5倍まで抗体濃度依存性に増強した。 2)第VIII因子活性化機序に関する検討 第VIII因子の凝固活性は第VIII因子が限定分解を受けて活性型の第VIII因子に変換される必要がある。本抗体は第VIII因子活性を増強することが判明したが、この活性増強機序を解明するために第VIII因子活性化機序の解明とその評価法の確立が必須である。そこで、平成20年度の研究において、微量の組織因子と内因性活性化物質であるエラグ酸をトリガーとする高感度トロンビン生成法を確立した。さらに、合成発色器質S2222を用いた活性化第X因子生成測定法も確立した。
|