研究概要 |
第VIII因子活性増強抗第VIII因子モノクローナル抗体の第VIII因子機能増強作用、作用機序について下記の検討を行った。 1) トロンビン生成能、凝固波形解析 第VIII因子(FVIII)存在下に本抗体を添加してトロンビン生成能を検討した。抗体の濃度依存性にlag timeやトロンビンピークに至るまでのPeak timeは短縮し、トロンビンピーク値を反映するPeak Th値やトロンビン生成総量を示すETPは増加した。特にピーク値は約3倍増加した。これらのパラメーターの改善効果は、aPTT凝固波形における波形改善効果と一致した。TFトリガーのトロンビン生成反応を内因系の活性化に起因する凝固トリガーの影響のない環境で評価するためにコーントリプシンインヒビターを添加した測定系で実施したが、同様の増強効果がみられた。 2) 第X因子活性化酵素複合体における反応性と安定性 本抗体の存在により純化FIXa, FX,リン脂質、合成発色基質によるFXa生成反応は亢進した。本抗体がトロンビン生成能やFXa生成能を亢進する機序をさらに明らかにするために、トロンビンおよび活性型第X因子(FXa)のFVIIIの活性化および開裂作用に対する影響について検討した。トロンビンを添加すると、抗体の濃度依存性にFVIII活性のピーク値が3倍程度増加した。また、電気泳動後のイムノブロット解析でトロンビンによるFVIII開裂パターンを検索したところ、本抗体の存在で開裂速度は亢進した。FXa添加によるFVIII活性上昇作用も、トロンビン活性化による上昇度より劣るもののみられた。イムノブロット解析でも、FXaによるFVIII開裂速度は抗体存在下で増加した。さらに、本抗体存在下に55℃の温度下でFVIIIの活性の推移を検討したところ、本抗体の存在によりFVIII活性の減少は軽減し安定化作用も有することが判明した。
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