研究概要 |
小児血球貧食症候群の病態にはT細胞活性化抑制性補助シグナルの遺伝子多型が関与する、という仮説を検証するため以下の研究を実施した.すなわち,T細胞活性化抑制性補助シグナルであるCTLA-4、BTLA、PD-1の遺伝子多型について、患者群(54例)と正常コントロール群(100例)についての解析を行った.その結果,CTLA-4遺伝子多型(ATリピート数,CT60)において患者群と正常コントロール群に有意差を認めた.また,ATリピート数と患者血清可溶性IL2レセプター値,血清LDH値に相関を認めた.いずれも,T細胞活性化抑制力が弱くなると推定される遺伝子多型を患者群に多く認め,また,同多型を有する患者の可溶性IL2レセプター値は高値を示した.BTLA遺伝子多型,PH遺伝子多型についてはその頻度に患者群と正常コントロール群に有意差はみられず,臨床症状および検査値にも有意な相関を示す遺伝子多型はみられなかった.以上の結果から,小児血球貧食症候群の病態にT細胞活性化抑制性補助シグナルであるCTLA-4の遺伝子多型が関与していることを世界で初めて証明した. 現在小児2次性血球貧食症候群の発症機序は明らかではなく,致命率も改善はみられていない.本研究で得られた知見は血球貧食症候群の病態解明につながるものであり,難治例に対するCTLA-4タンパクの臨床応用に有用な知見である.
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