1986年から2008年12月までに東海大学で末梢血リンパ球のDNA架橋剤による染色体脆弱試験を施行した163例の解析を試みた。一部の症例ではFAの診断確定のためFANCD2のモノユビキチン化の解析とFanconi anemia(FA)遺伝子の同定を行った。 結果として、1)77例がFAと診断された。5例は身体異常を全く伴わず、14例は低身長か色素沈着のみで外表・内蔵奇形の合併はみられなかった。23例が白血化を伴い、61例に造血幹細胞移植が行われ、うち50例が生存中である。2)非FAと診断された86例中身体異常を伴わない症例は56例であった。再生不良性貧血38例、MDS/白血病13例、他5例であった。43例に造血幹細胞移植が行われ、うち36例が生存している。3)FA以外で身体異常を合併した症例は30例みられ、うち13例がMDS/白血病であった。18例に造血幹細胞移植が行われ、12例が生存中である。 これらの結果より、理学所見のみではFAと非FAの鑑別が困難な症例も多く、小児期に発症した骨髄機能不全症にはDNA架橋剤による染色体脆弱試験が必要と思われる。FAを含む身体異常を伴う骨髄機能不全症はMDS/白血病へ移行する可能性も高く、造血細胞移植の検討が必要である。
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