末梢血リンパ球に対するDNA架橋剤添加による染色体脆弱検査と臨床症状、およびFanconi貧血(FA)遺伝子のゲノムシーケンスより、24例のFANCAと7例のFANCG遺伝子の変異を同定した。このうち2例ではリンパ球にリバージョン・モザイクを認め、骨髄線維芽細胞を用いて変異を検出した。FANCA同定に際しては、Multiplex Ligation-dependent Probe (MLPA)法の導入により解析FA症例42検体中16例(38.1%)で陽性を認めた。これはダイレクトシークエンス法でFANCAと判明した27例中16例(59.3%)でMLPA法により少なくとも片アリルが検出され、FANCAと診断可能であった。 成人期のFAの報告は少なく、15歳以上で診断または造血細胞移植を受けた青年期・成人期FA21例の解析を行った。うち13例はMDS/AMLへと進行しており、3例に口腔内がんがみられた。18例に造血細胞移植が施行され15例が生存している。死亡の3例はAML症例であり、移植後発がんは3例にみられた。成人期に診断されるFAでは内臓異常をはじめ、身体異常の軽症例が多く、染色体脆弱検査では断裂のみられない上記に示したリバージョン・モザイク例が2例含まれており、診断にも注意を要する。 2010年までに日本造血細胞移植学会のTRUMP登録されたFA患者の造血細胞移植125症例に対する移植時病態、移植時年齢、移植年代、ドナーおよび前処置別の移植成績と合併症を検討した。移植後5年全生存率は81%であり、2000年からFludarabineを前処置に用いることで拒絶やGVHDの頻度が減少し、5年生存率は約90%と極めて良好な成績を示し、非血縁移植においても同胞間移植と同等の成績が得られようになった。
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