代表的な小児がん、神経芽腫には、しばしば自然退縮を起こす予後良好タイプがある一方で、1歳以降に生じ、非常に予後不良な難治例も存在する(5年生存率:約30%)。本研究では、これまでに行ってきた神経芽腫の網羅的ゲノムコピー数異常解析と遺伝子発現解析のデータを基礎に、エピゲノム解析とマイクロRNA発現解析を組み合わせ、新規神経芽腫関連遺伝子の同定と解析を行う。本年度は以下を進めた。 1)マイクロRNA発現解析 解析サンプルを追加して昨年度得られた候補遺伝子の再現性確認を主に行った。約500種類のマイクロRNAを搭載したmiRNAチップを用いて、合計48症例(予後良好群、予後不良群各24例)の発現プロファイルを行い、両群間で発現レベルに有意に差のあるプローブを抽出した。並行して同症例群に対して神経芽腫由来遺伝子発現チップによる解析を行い、約5000遺伝子についての発現データを取得した。TargetScanデータベースに対する検索により、上記により抽出したマイクロRNAが発現調節すると推測される遺伝子群のうち、実際の発現パターンが一致するものを抽出したところ約50遺伝子が候補として絞り男込まれ、さらに約20の遺伝子が再現性をもって抽出された。そこで今後は絞り込んだマイクロRNAについて定量PCRを進め、予後診断マーカーとして使用可能かどうかの検証を開始する。 2)エピゲノム解析 神経芽腫細胞株12種類について脱メチル化処理前後の各遺伝子の発現レベルが6種類以上の細胞株で異なるものを約100遺伝子選択し、同じ細胞株のゲノムDNAを用いたBisulfate法によるゲノムメチル化の有無の検証を進めた。マイクロアレイを用いた遺伝子発現解析において、予後良好群で有意に高い発現レベルを示す遺伝子を中心に3つの遺伝子に絞り込み、細胞株を用いたBisulfateシーケンシングを行ったところ、うち1つの遺伝子でゲノムメチル化を検出した。今後はさらに同遺伝子についてプライマリー腫瘍におけるゲノムメチル化の有無の確認を行う予定である。
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