研究概要 |
代表的な小児がん、神経芽腫には、しばしば自然退縮を起こす予後良好タイプがある一方で、1歳以降に生じ、非常に予後不良な難治例も存在する(5年生存率:約30%)。本研究では神経芽腫の網羅的ゲノムコピー数異常解析と遺伝子発現解析のデータを基礎に、以下のようなエピゲノム解析とmiRNA発現解析を組み合わせ、新規神経芽腫関連遺伝子の同定と解析を進める。 1)miRNA発現解析 平成22年度は神経芽腫の予後に強く相関するmiRNAの検索を行なった。470種類のヒト由来miRNA配列を搭載したマイクロアレイを用いて、48症例(予後良好群19例、予後不良群16例、中間予後群13例)のmiRNA発現解析を行い、診断後3年時点での患者予後に関して強く相関するものを79種類抽出した。17種類の予後不良群で高発現するmiRNAのうち治療抵抗性と強く相関がいわれている1qにマップされるものが5種含まれていた。一方、62種類の予後不良群で低発現のmiRNAのうち、進行神経芽腫の腫瘍でゲノム欠失が高頻度に見られる1p,19q、14qにマップされるものがそれぞれ5種、6種、9種含まれていた。今後は絞り込んだマイクロRNAについて他の予後因子との関連性の検討と予後マーカーとしての最適な組み合わせ法の吟味を行なう。 2)エピゲノム解析 神経芽腫細胞株6種類において脱メチル化剤処理後の発現レベルが大きく増加し、かつBisulfateシーケンシングによりゲノムメチル化を検出した一つの遺伝子についてプロモーター領域を詳細に解析するとともに、100例の神経芽腫症例由来腫瘍組織を用いたゲノムメチル化の検証を行なった。この遺伝子はmiRNA発現レベル、ゲノムメチル化レベルともに神経芽腫の予後に強く相関しており、新しい予後マーカーとなりうることが示唆された。本遺伝子の機能についてはこれまでにほとんど報告がないため、今後は同遺伝子の神経芽腫細胞における機能解析を行う予定である。
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