研究概要 |
ネフローゼ症候群における尿中への蛋白漏出には糸球体上皮細胞足突起を結合するスリット膜が重要な働きを担っており、スリット膜が蛋白漏出の濾過障壁となっていることが知られている。これまでの私達の独自の研究から、スリット膜構成分子であるnephrin、nephlが細胞間の接着分子として機能するだけでなく、その細胞内領域のチロシン残基のリン酸化により細胞内シグナル伝達に関与していること、および、そのリン酸化が病態(蛋白尿)に関与することを明らかにしてきた(Harita et a1.J Biol Chem 2008)。 本研究の初年度の成果として、nephrinリン酸化がPLC-γ1の結合と活性化により、細胞内Caシグナル制御に関与していることを明かにした(Harita et al.J Biol Chem 2009)。 1.Nephrin細胞内旗域/CD8のキメラ蛋白を作成し、HEK293T細胞に発現させ、anti-CD8抗体を作用させることによりnephrinの細胞内領域めリン酸化を誘導させた。 2.Nephrinが上記の操作により特定のチロシン残基(Tyr-1204)のリン酸化を受けるとPLC-γ1がTyr-1204特異的にリン酸化Nephrinに結合する。 3.リン酸化nephrinに結合したPLC-γ1は活性化され、細胞内inositol 1,4,5-trisphosphateを上昇させるとともに、細胞内Ca濃度を増加させた。 これら一連の現象は、nephrin細胞内領域のリン酸化が細胞細胞内Ca濃度の制御に関与することを示すとともに、糸球体上皮細胞障害にも関与することを示唆する。現在、ヒトでの蛋白尿発症における糸球体上皮細胞細胞内Ca濃度との関連を別の実験系を用いておこなっている。
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