研究概要 |
本年度は、昨年度からひきつづきスリット膜蛋白(Nephrin,Neph1)のリン酸化とそれに引き続くpodocyteでの情報伝達について解析をおこなった。Nephrinのリン酸化によりPLC-γの結合・活性化がおこり、細胞内Caの増加がおこることを見いだした(J Biol Chem 2009)。さらに、他のシグナル伝達経路を介してTRPC6チャネルの活性化を生じるという新しいメカニズムの解明もおこなった(論文投稿中)。特筆すべきは、こうしたシグナル伝達の最終的なtarget分子と想定され、また、巣状糸球体硬化症(FSGS)発症のkey moleculeであるNMMHC-IIAのpodocyteの局在と病態への関与の解析を遺伝性腎炎(Epstein/Fechtner症候群)の患者解析で明らかにしたことである(Kidney Inter 2010 Mar 3, pubmed online)。2008年にgenome-wide-association解析から、特発性FSGS発症と連関する分子としてMYH9遺伝子でコードされるNMMHC-IIA分子が同定された(Nat Genet 2008)。私達は、以前よりMYH9遺伝子に変異があり、異常NMMHC-IIAを発現する患者解析をおこなってきた。これらの患者の一部は進行性腎炎を呈するが、私達ははじめて 1)この進行性腎炎の病理がFSGSであること、2)患者においてはpodocyteに発現しているNMMHC-IIA分子の発現低下をみることをあきらかにした。 来年度は、podocyte内のシグナル伝達機構と、NMMHC-IIA分子の挙動についてさらなる解析をおこなう予定である。
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