研究概要 |
心筋緻密化障害noncompaction of ventricular myocardiumば、心室壁の過剰な網目状の肉柱形成と深い間隙を特徴とした心筋症で、近年、年長児や成人の報告例も増え、それほど稀な疾患ではないことが明らかになった。我々は、本邦で初めて心筋緻密化障害の症例を報告し[日児誌1996.]、さらに全国調査を行い、その臨床像が心不全、不整脈や塞栓症など極めて多彩であることを報告した[AJCC 1999]。また、心筋緻密化障害には遺伝的多様性があり、その発症には、G4.5(TAZ)遺伝子の他[Mol Genet Metab, 2002]、Dystrobrevin遺伝子(DTNA)変異[Circulation 2001]やcypher/ZASP(LDB3)遺伝子異常など数多くの遺伝子が関与していることを明らかにした[Mol Genet Metab, 2002]一方、心筋緻密化障害は、心不全、不整脈、塞栓症と多彩な臨床像を呈することが特徴であり、しかも同一家系内でも表現型が異なることが知られている。そのため、発症に関与する責任遺伝子群の他、臨床像を修飾する遺伝子群も存在する可能性がある。心筋緻密化障害には高頻度に多彩な不整脈の合併がみられ、特に致死的な不整脈を合併するため、この疾患の予後を規定する重要な因子になっている。乳幼児期発症例では、完全房室ブロックやWPW症候群など先天性の要素が強く、思春期や成人発症例では心室頻拍や心房細動など心筋傷害に伴う二次的な不整脈が主体である[日本心電図学会誌2006]。ヒト心筋Na^+チャネルαサブユニット遺伝子(sodium channel alpha-subunit gene, SCN5A)は、QT延長症候群やBrugada症候群の責任遺伝子の他、房室ブロックなど多彩な不整脈の発症にも関与している。そこで、我々は、心筋緻密化障害に高率に見られる多彩な不整脈に関与する修飾遺伝子として、SCN5Aに着目し、44名の不整脈を伴う心筋緻密化障害患者において遺伝子解析を行なった。その結果、不整脈を伴う心筋緻密化障害患者においては、高率にSCN5A遺伝子変異が認められ、臨床像を修飾する重要な遺伝子である可能性を報告した。[Mol Genet metab 2008, 93 : 468-474]。しかも合併する不整脈が房室ブロック、WPW症候群、心房細動、洞不全症候群、心室頻拍など多彩であることが明らかとなった。
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