研究課題
ヘムオキシゲナーゼ1(HO-1)はヘムを一酸化炭素(CO)とビリルビンとフェリチン(Feより誘導される)に代謝する律則酵素である。われわれが世界で初めて発見した「ヒトHO-1欠損」症例(1999)は2歳頃からの全身性慢性炎症が増悪し,6歳で死亡した。本症例のこれまでの詳細な病態解析とin vitro実験的研究によって、HO-1の、生体へのストレス防御因子としての役割を解明し、下記の研究成果を得た。(1)患児の肝臓ほかの生検材料や不死化リンパ球細胞株でHO-1蛋白の発現が認めらないこと、ただしHO-1mRNAの発現は認められた。(2)患児および両親のHO-1遺伝子解析から、母親アリルにエクソン2の欠損、父親アリルではエクソン3に2塩基欠損があることがわかり、患児はその複合ヘテロ接合体であることが知れた。さらに母親の染色体遺伝子を詳細に解析したところ、エクソン2を含む1、730bpにおよぶ大きな欠損が証明された。そして、エクソン2はAluくり返し配列にはさまれる構造であることが知れ、本例のエクソン2欠損はAluくり返し配列の相同的組み換えによる配列欠失の可能性が示唆された。以上から本疾患が確立された。(3)HO-1欠損症の臨床特徴は、主として造血系単球と血管内皮細胞及び腎尿細管細胞の障害に起因する。(4)HO-1欠損症では、外因性酸化ストレスによって、全身性炎症と凝固線溶系の著しい亢進を惹起し、ストレスが長期に継続すると、免疫系や凝固線溶系か消耗、破壊される。(5)単球細胞表面抗原の異常、貪食能の低下が認められた。また、単球のHb/Hp/CDI63コンプレックスがHO-1誘導と強く相関することがわかった。(6)各種腎疾患の生検材料、及びin vitro細胞株の検討から、HO-1は、腎尿細管上皮におけるストレス防御に有効に働いていることが強く示唆された。(7)われわれの第1例発見から十年余を経てようやく第2例目が発見報告された。(Radhakrishnan N, et al.雑誌論文参照)この症例にはわれわれも遺伝子解析で協力した。無脾症であることなど臨床症状に類似性が高い。ただし、軽症で15歳を超えて比較的元気で生存おり、これは遺伝子変異箇所の違いによるのかもしれない。本症例の遺伝子変異は、エクソン2(R44X)のミスセンス変異がホモでみられストップコドンとなっていた。症例が複数になることでHO-1欠損症の病態がより詳細に解明された。
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