Epstein-Barrウイルス(EBV)は、ヒトに普遍に感染し、広範な疾患を引き起こす。小児期の難治性疾患としては、慢性活動性EBV感染症(CAEBV)がある。CAEBVは、発熱、リンパ節腫脹、および肝脾腫などの症状が持続し、10-15年程度の経過で死亡率が高くなる予後不良の疾患で病因には不明な点も多い。症例は日本をはじめとしたアジア地域に集積しており、この疾患の解明は小児科領域では非常に重要である。 CAEBVではEBVが本来の標的細胞であるBリンパ球ではなくTリンパ球およびNKリンパ球であることが特徴である。そのため、CAEBV患者のTリンパ球、NKリンパ球を分離して、その分画における遺伝子発現を網羅的に解析する予定であった。最近、私共はウイルス抗原に対するプローブを応用しフローサイトメトリーにより感染細胞を同定するシステムを開発したので、各細胞分画中の感染細胞の頻度を解析し、T・NKリンパ球分画でマイクロアレイを行う妥当性を検証する予定である。 他方、ヒト扁桃組織を用いたEBV組織感染モデルの確立を目指した。ヒト組織感染モデルを用いて、CAEBVの病初期に、EBVがTリンパ球やNKリンパ球へどのように感染するのかを解明する手がかりが明らかになることが期待される。組織モデルの構築は、医学的理由で摘出された健常扁桃組織を、3ミリ角の小片に切り分けた後、ゼラチンで作られたスポンジ台の上に置き、培養液に組織片の一部が浸る状態にしてウイルスを感染させ、培養する手順で行った。B95-8というEBVの代表的実験株を用いた実験で、感染後15日ごろからウイルスの増殖が明らかとなり、その後10日間程度はウイルスの増殖が持続することが確認された。現在、蛍光タンパクを発現する改変ウイルスを用いて増殖を確認する実験を行っている。
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