平成22年度の目的は、小児の難治性糸球体腎炎やラット進行性腎炎においてHic-5の糸球体発現の役割を別の観点から発展させ追求することであった。腎炎進展でみられるHic-5の発現と役割が腎臓の発生過程でも共通しているかを確認し、Hic-5の腎炎進展での役割を検討した。 腎臓の発生において未分化なメサンギウム細胞は腎炎活動期のメサンギウム細胞と同様に活性化状態にあるが、Hic-5の発現は未分化メサンギウム細胞にみられ、この発現はHic-5と構造が類似するパキシリンや関連蛋白であるFAK、ILKの発現と全く異なるものであった。さらに、Hic-5の活性化誘導分子である活性酸素とその産生機構NADPHオキシダーゼの発現も調べたが、実際にHic-5の発現だけでなく活性酸素も腎発生で重要な役割を果たしていることが明らかとなった。このことからHic-5やHic-5誘導因子である活性酸素の適切な調整が腎臓発生に重要であるだけでなく、腎炎進展を抑制しうる重要な機構であることが推測された。また、本年の計画として同様に行ったsiRNAを用いたHic-5の発現制御実験では、Hic-5発現は細胞接着分子の機能に影響しコラーゲンゲル収縮に関与することが明らかとなり(未発表データ)、今後Hic-5ノックアウトマウスを用いて腎炎モデルでの検討を進めている。尚、研究成果は国際小児腎臓病学会等で発表した。現在までの判明した結果は、国際学会雑誌等に投稿中である。
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