研究概要 |
川崎病(KD)の治療として免疫グロブリン超大量療法(IVGG)が有効であるが、一部に治療抵抗例(nonR)があり冠動脈異常(CAA)を高率にきたす。そこで、CAAを減らすためにnonRを予測し重点的な治療を行う試みを検討した。nonR予測スコアとしてKobayashiらは臨床データを基にしたスコア(Gunmaスコア)(鋭敏度86%、特異度68%)を報告している。そこで、Gunmaスコアによる重症度評価にHMGB1を指標に加えることでnonR予測精度の向上が可能かどうかも検討した。【対象および方法】鹿児島市医師会病院に入院しIVIG治療を行ったKD確実例で治療前の血清HMGB1測定を行った101例を対象とし、IVGG反応群(R群)とnonR群に分けて検討した。【結果】nonR群が16例、IVIG反応例(R群)が85例だった。nonRは白血球数、好中球%、CRPが有意に高値で、血小板数、Alb、Naが有意に低値だった。nonR群のGunmaスコアは有意に高値で(nonR,5.1±2.9;R,2.7±2.1,p=0.0002)、スコア4点以上を予測nonRとすると鋭敏度63%、特異度68%だった。nonR群のHMGB1(ng/ml)は有意に高値で(NR,14.8±11.3;R,9.7±5.5,p=0.0064)、15.2ng/ml(R群のmean+SD)をカットオフ値とすると、鋭敏度50%、特異度87%だった。Gunmaスコア5点以上とHMGB1高値を予測nonRとすると鋭敏度81%、特異度71%だった。【結語】GunmaスコアにHMGB1高値を加えることでnonR予測の精度向上が期待される。 今回の検討では、HMGB1によるnonRスクリーニングの特異度は高かったが、感度が低くなっていた。 しかし、Gunmaスコアとの併用が有用であるという情報は有意義なものであった。HMGB1による川崎病の重症度評価の精度に関してはより多くの症例数が必要であり、今後も検討する。また、他の評価との組み合わせで更なるスクリーニング精度の向上についても検討を行っていく。
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