研究課題
臨床検査値を基にしたスクリーニングスコア(Gunmaスコア)と炎症と細胞障害の悪循環に関連するHigh Mobility GroupBox 1(HMGB1)を併せた免疫グロブリン大量療法(IVIG)不応例スクリーニングを行った。【方法】川崎病患児のIVIG前の血清を用いてHMGB1値をELISA法で測定した。川崎病患児は初回IVIGで軽快した児をIVIG反応例(反応例)とし、追加治療を必要とした児をIVIG不応例(不応例)として2群に分けて比較検討した。【結果】治療前の血清HMGBI測定を行った156例を対象に検討した。IVIG不応例が18例、IVIG反応例が138例だった。両群の性別、年齢に差はなかった。川崎病の診断病日、IVIG開始病日、IVIG量には差がなかったが、IVIG後の発熱期間は不応例が有意に長期間で、冠動脈後遺症(CAA)頻度も有意に高頻度だった。入院時検査所見は、不応群で白血球数、好中球%、CRPが有意に高値で、血小板数、Alb、Naが有意に低値だった。不応群のHMGBI値は高値の傾向があり、Gunmaスコアは有意に高点だった。IVIG不応スクリーニングとしてGunmaスコア4点以上を予測不応例とすると、その鋭敏度は61%、特異度は67%、精度67%だった。HMGB1高値例(15.2ng/ml以上)を予測不応例とすると、鋭敏度38%、特異度82%、精度78%だった。Gunmaスコア4点以上とHMGB1高値を予測不応例とすると鋭敏度78%、特異度58%、精度60%だった。Gunmaスコア5点以上とHMGB1高値を予測不応例とすると鋭敏度72%、特異度67%、精度70%と精度の向上がみられた。【結論】GunmaスコアのIVIG治療不応例スクリーニングの精度はHMGB1高値を加えることでその向上が期待される。今後も症例数を増やして検討していく必要がある。【研究の意義】CAA頻度はIVIGの更なる改善には、CAA発生頻度が高率であるIVIGに反応しない重症例をスクリーニングし、それらの症例において新たな治療戦略を検討する必要性がある。そのためにも本研究のように精度の高いIVIG不応スクリーニング法の開発を検討することは意義深いものと考えられる。
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