研究概要 |
下痢症患児から分離された腸管凝集性大腸菌Enteroaggregative E. coli (EAEC)の多様性を検討した。腸管凝集性大腸菌(Enteroaggregative E. coli, (EAEC)は、 HEp-2細胞への凝集付着を特徴とし,発展途上国の持続性下痢症の原因菌として知られているが,先進国でも乳幼児下痢症で分離頻度が高いことが最近報告された。 EAECは,転写調節因子AggRとその関連遺伝子群を持つtypical EAEC,持たないatypical EAECに区別されている。下痢症患児由来大腸菌を定量的バイオフィルムアッセイでスクリーニング後、 HEp-2細胞付着試験で判定した。病原遺伝子はPCRで検出し、遺伝子型はパルスフィールド電気泳動(PFGE)を用いた。また0.03%塩酸、0.4%乳酸(pH2.0)に対する酸耐性試験を行なった。下痢症由来大腸菌2,594株中114株(4.4%)がEAECであり, typical EAECが69株(60.5%)、atypical EAECが45株(39.5%)であった。 typical EAECの病原遺伝子検出頻度はatypical群に比べて高かったが、既知の付着線毛遺伝子が検出されたのは16株(23%)のみであった。 PFGEによる遺伝子型はいずれの群も多様性が著明であった。典型的な凝集付着様式を示す株がtypical EAECで54株(78.3%)を占め、atypical群では非典型的なものが多かった。バイオフィルム形成能,酸耐性度もtypical EAECが有意に高かった。 EAECの検出頻度は4.4%と比較的高頻度であった。 typical EAECがatypical EAECにくらべて強い病原性を持つことが示されたが,過去に報告された付着線毛遺伝子を保有しない株も多く、未知の病原因子の存在が推測される。また遺伝子型,表現型ともにEAECには多様性が顕著であった。
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