研究課題/領域番号 |
20591285
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研究機関 | 和歌山県立医科大学 |
研究代表者 |
中西 浩一 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50336880)
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研究分担者 |
吉川 徳茂 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (10158412)
泉 鉉吉 和歌山県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (70423952)
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キーワード | 多発性嚢胞腎 / 遺伝性腎疾患 / 上皮間葉移行 / PCKラット / E-cadherin / β-catenin / 間葉系マーカー / N-cadherin |
研究概要 |
本研究の目的はPKDにおけるEMTの役割を明らかにすることである。 ヒトARPKD原因遺伝子の相同遺伝子に変異を有するPCK ratにおいて、細胞極性の維持に重要な接着分子であるE-cadherin、およびβ-cateninならびにN-cadherinと間葉系マーカー(Vimentin、Fibronectin、α-SMA)の発現を経時的かつ尿細管部位特異的に詳細に検討した。生後0日、1、3、10、14週と4か月の雄PCKと対照各々5匹の腎連続切片を各抗体と尿細管部位特異的マーカーで染色し、嚢胞形成様式とEMTとの関連を検討した。E-cadherin量は、Western blot法でも評価した。 嚢胞性尿細管上皮のE-cadherinとβ-catenin発現レベルは嚢胞増大に伴い減弱し、加齢に伴い細胞間接着部位に限局した。PCKの嚢胞形成は、正常対照でE-cadherin発現の強い部位でより重篤であった。PCKにおけるE-cadherinの発現は、Western blot法でも対照と比較して減弱していた。N-cadherinは正常では発現がない部位において、嚢胞の形成・増大に伴いde novoの発現がみられた。間葉系マーカーは嚢胞周辺の腎線維化が明らかになる10週以降で、嚢胞性上皮細胞に陽性であった。間葉系マーカーの発現は特に線維化の強い領域の上皮細胞で強かった。 嚢胞性上皮細胞では嚢胞の形成増大に伴い極性の消失が進行し、間葉系の形質を獲得しており、PKDの病態にEMTが関与していると考えられる。 PCK ratにおけるEMTの関与が明らかになった。今後さらにその情報伝達系を解明し、病態特異的治療法の開発に発展することが期待される。
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