研究概要 |
血小板は脱核した細胞であり、血小板自体には遺伝子の新たな発現を認めないが、巨核球から分離される際に2,000以上の巨核球の遺伝子トランスクリプトを含蓄されているとされる。血小板寿命は7-10日であることから、血小板に含蓄されるトランスクリプトを解析することで、約1週間までに遡った個体の遺伝子発現情報を分析することが可能となる。今回我々は入院時に採取した血小板に含まれる遺伝子トランスクリプトを解析することで、川崎病発症に関わる遺伝子を探索し、川崎病発症の根幹となるサイトカインの存在を検索した。川崎病15例と肺炎・気管支炎にて入院した症例10例をコントロールとした。Agilent社清DNAマイクロアレイを用いて遺伝子発現を検索し、21,872個の遺伝子が有意な発現として同定された。さらに、川崎病とコントロール間で2倍以上の発現の差が認められた遺伝子について、Gene Ontology解析、パスウェイ解析を行った。その結果サイトカイン解析では、同じパスウェイ上にあるInterleukin-1、Interleukin-18の発現高値が見出された。川崎病においてこれまで高い発現が確認されている代表的サイトカインであるTumor Necrosis FactorやInterleukin-10などはむしろ低下していた。 川崎病発症時においては、Interleuki-1、Interleuki-18といったTh1細胞を活性化するようなサイトカインの発現が主であり、その後の「サイトカインストーム」と呼ばれる川崎病の特徴的病態へとつながっていくことが示唆された。
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