申請者は、SNAT4における3つの選択的プロモーターおよびHNF4α結合配列を同定した。これらの結果より、SNAT4がHNF4αにより強く制御される分子であることが証明された。 さらに申請者は、免疫組織学染色により蛋白発現を詳細に解析し、SNAT4が胎生後期のHNF4α陽性肝芽細胞に発現し、形質膜に強い染色性を認め、成体肝では肝細胞の類洞側に染色性を認めた。このことは、出産を境としてアミノ酸取り込みの主たる臓器が胎盤から肝臓へと移行することと一致しており、合目的的であると思われた。 最後に、SNAT4アデノウイルス発現ベクターを用いて、SNAT4の過剰発現につき検討した。SNAT4がアミノ酸トランスポーターであることから、蛋白合成に影響を与えることが予想された。アミノ酸トランスポーターを過剰発現させ、メタボリックラベリングによるde novo蛋白質合成の測定を行い、SNAT4過剰発現群と比較した。SNAT4過剰発現でそれぞれ蛋白合成の若干の増加を確認できた。この系において、肝細胞内に豊富にあり比較的代謝回転の速い蛋白であるレチノール結合蛋白RBP1(細胞質型RBP)に着目してmRNAと蛋白レベルを調べた所、蛋白レベルでの増加が確認出来た。同様にリアルタイムPCRで追試の結果、mRNAはむしろ減少していることが分かった。他の蛋白AFPやアルブミンの発現に関しては、有意な変化は確認できなかった。また、肝細胞分化マーカーのHNF4αやTAT、CPS1は、蛋白レベルにおいて明らかな変化は確認できなかった。以上のことから、SNAT4は、HNF4αの標的分子として主に翻訳レベルで、肝細胞内の分子の発現を制御していることが示唆された。以上の結果をあわせ、現在、投稿準備中である。
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