研究概要 |
遺伝性多指症/無嗅脳症マウス(Pdn/Pdn)の胎生7.5日にカビ毒であるオクラトキシンAを曝露し、胎生18日に胎仔を外形観察すると、雄Pdn/Pdnに神経管閉鎖障害(NTDs)を多発していた。このことから、オクラトキシンAは性に関連する遺伝子発現に影響を与え、この発現変動とGli3発現抑制の相乗効果で神経管閉鎖障害が発症したと考えた。 そこで、胎生7.5日のPdnマウスにオクラトキシンAを曝露し、胎生9日に胚仔を取り出して、卵黄嚢膜からDNAを抽出し、PCRで遺伝子型(+/+,Pdn/+,Pdn/Pdn)および雌雄を決定した。胚本体からmRNAを抽出し、DNAマイクロアレイ、Real-time PCR法で遺伝子発現量の測定を行い、遺伝子発現をWISH (Whole mount in situ hybridization)法で調べた。DNAマイクロアレイによって決定してきたGli3の影響下にある遺伝子として、FGF8, Wnt8b, Wnt7b, Emx2, Wnt7b, Dmrt3, Wnt9a, Tmem26, Fez1, Barx1を、OTA処理によって変動した遺伝子として、Daam, Hoxb1, Tbx, Hmx3, Dlx1, Tlx, Ctshを、性関連遺伝子として、Wt1, Emx2, Ad4BP, Lhx9, Lim1, Sry, lgf1, Gata4, Fog2, Dax1, Wnt4, Sox9, Dmrt1の遺伝子発現および発現部位を調べた。 その結果、オクラトキシンAを曝露されたPdn/Pdnで、Daam, Hoxb1, Tbx, Hmx3, Dlx1, Tlxhは、+/+、Pdn/Pdnとも、オクラトキシンA処理により大幅に発現量が増加したが、性差が認められなかった。Fgf8, Emx2は発現量に差は認められなかったが、無処理Pdn/PdnおよびオクラトキシンA処理Pdn/Pdnで異所性発現を示した。これらの遺伝子発現量の変化や異所性発現の総合作用によって、オクラトキシンAによるNTDsが雄に発症したものと考えた。
|