新生児の慢性肺疾患のひとつである気管支異形成症(BPD)は極低出生体重児の生命予後のみならず、後の成長発達・QOLにも深くかかわる疾患である。しかしBPDの重症化を予測する客観的な指標は乏しく、治療方針の決定を困難にしている。従ってBPDの予後に関する情報を蓄積して詳細な検討を行い今後の治療の指標とすることは大変重要と思われる。本研究の目的は、(1)晩期障害の頻度と治療との関連を明らかにする、(2)BPDの重症度と相関する因子を検討する、ことにある。初年度は、愛媛大学周産母子センターと県立中央病院新生児科で入院治療を受けた極低出生体重児症例を対象に、呼吸障害の既往のある、なしで分類し一次アンケート調査を行いそのデータを集積中である。アンケート項目は、現在の体重と身長・呼吸器感染症とくに下気道感染症やRSウイルス感染の既往・アレルギー疾患の既往・慢性的な呼吸器症状の有無と環境・生活上の問題点(就学・遊び・運動など)・家族の受け入れ状況など。今後はアンケートから得られる晩期効果との関連を検討する。また3歳以上の症例を対象に呼吸機能および循環器検査を行い、BPDの重症度と相関する因子を抽出する予定である。 引き続きアンケート解析と後方視的研究を行う。具体的には 1.愛媛大学附属病院周産母子センターで入院治療を受けた極低出生体重児の入院時記録から、当時の治療と胸部X線所見や好酸球数・好中球数・血小板数・血液ガス・CPKなどの一般的検査結果を入手する。これらの結果と入院期間・人工呼吸器使用期間などの急性期効果およびアンケートから得られる晩期効果との関連を検討する。 2.さらに患児の呼吸機能検査(ピークフローメーター・スパイログラム・気道過敏性検査・呼気中NO濃度測定他)、循環器検査(心電図・心エコー・胸部X線他)、身体計測を行う。同時に、生活全般の問題に関する聞き取り調査を行い、必要な場合はカウンセリングを行う。 3.呼気中NO濃度は、専用バッグでサンプルを採集し、分析をおこなう。同時に尿中・喀痰中LTE4、喀痰中IL-6を測定する。また血清中・喀痰中CCL6もELISA Kitを用いて測定する。 今後はアンケートから得られる晩期効果との関連を検討を継続して行う。また、負荷試験の可能な就学年齢前後(6~7歳)の症例を対象に、心肺運動負荷試験(CPX:cardiopulmonary exercise test)を行い、BPDの重症度と相関する因子を抽出する予定である。
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