研究概要 |
本課題における初年度、第二年度の検討から、(EVT)の血管内皮様分化のメカニズムについて検討し、EVTと血管内皮はマトリゲルの刺激により同じ形態変化を示すがその機構は異なること、EVTにおいてはHIFIAの発現および転写活性と分化能が相関していること、Xanthine Oxidase(XO)が産生するROSはヒトEVT細胞株にアポトーシスを誘導し,細胞浸潤能や細胞分化を抑制すること,これらの影響は主としてH2O2により惹起されることを示した。つまり、絨毛の浸潤過程において寡能性EVTは細胞外基質や液性因子のみならず酸素濃度など周囲の環境を調節因子としてこれに適応するように分化し、妊娠高血圧症候群の病態形成においては胎盤局所でも単に酸素濃度のみならず虚血再潅流等によるROSが関与していると考えられる。 そこで本年度は、妊娠高血圧症候群胎盤におけるROSの関与を明らかにするために、活性酸素種による細胞障害で生じる8 OHDCについて、正常対照41例ならびにPIH患者27例において胎盤を染色し、その染色と臨床像を比較した。80HdGは、胎盤の合胞体絨毛細胞がPIH症例では年齢や妊娠背景の一致する対照例に比し有意に陽性に染色されていた。PIH症例のなかで、80HdG陽性例は陰性例に対し、妊娠中の血中尿酸値が高値で分娩週数が早く早発型の割合が多かった。 これらの結果は、前年までのin vitroで得られた解析の通り、臨床検体においても、胎盤において虚血再潅流障害は活性酸素種を介して直接絨毛細胞を障害する場合があることこの障害は、早発型の妊娠高血圧症候群の病態に関連する可能性があることを示すと考えられた。
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