研究課題
今年度は、これまでの我々の研究で明らかになったいくつかの臍帯血マーカー候補について、検討を行った。まず、胎内ストレスに関係することが予想されるANP・BNPを測定したが、脳室周囲白質軟化症との関連はみられず有用でないことが明らかになった。また、近年脳保護作用があることが明らかになりつつあるエリスロポエチンについて検討を行った。しかし、脳室周囲白質軟化症との関連はみられず臍帯血マーカーとしては適切でないことが判明した。さらに新たな4種類の膀帯血マーカー(アンギオテンシン変換酵素・P-セレクチン・8-イソプロスタン)について検討を行った。脳室周囲白質軟化症の患者では出生後早期に一過性の乏尿がみられ、出生前の血流再分配による腎前性腎不全の存在が示唆される。この現象に関与している可能性を考え、アンギオテンシン変換酵素を測定した。P-セレクチンは、様々な機序による脳障害において血管内皮障害マーカーとして有用であることが知られている。脳室周囲白質軟化症には虚血の関与が考えられ、再潅流障害に酸化ストレスが関与している可能性がある。脳室周囲白質軟化症において酸化ストレスが証明できれば、ラジカルスカベンジャーを治療薬として使用できる可能性があるため、8-イソプロスタンにより酸化ストレスを検討した。しかし、現時点ではどのマーカーにも統計学的有意差は得られておらず、脳室周囲白質軟化症との関連は明らかになっていない。このような結果から、個々のマーカーの検索では有用なものを見出すことは容易でないと考えた。したがって、現在RNA発現解析のような網羅的な解析を行うために準備を開始した。現在までに脳室周囲白質軟化症患児を含む早産児の臍帯血の収集を開始しており、次年度に解析を行う計画である。
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