母体血中有核赤血球を用いた出生前診断法を確立するため、有核赤血球分離法の最適化・細胞レベルの遺伝子診断法の改良に取り組み、現状で最適な有核赤血球分離・回収・診断プロトコールが完成した。このプロトコールを用いた出生前診断のClinical Trialとして97例の羊水染色体検査を行う妊婦を対象に胎児の性別と21番及び18番染色体の数的な異常の診断を行った。その結果、平均18週の妊婦の血液平均12mLから中央値12個(range:1-98)の有核赤血球が回収され、FISH解析された。この97例の中で男児妊娠例は39例あり、合計356細胞中158細胞がXYシグナルを有し、男児細胞であり胎児由来と確認された。男児の診断精度は疑陽性が1例あり、偽陰性が5例あった。性別診断の正診率は93.8%であったが、回収細胞数が3細胞以下であった13症例中の4例は疑陽性、偽陰性であり、回収細胞数を増やす必要性が再認識された。さらに、この97例中に9例の18-トリソミー、6例のダウン症候群があったが、これらの染色体異常の症例は100%正確に診断できた。この結果から、母体血中に確実に有核赤血球が存在することを再確認し、その上で、母体血中有核赤血球を用いた胎児染色体診断法の臨床応用の可能性を証明した。
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