研究概要 |
コレステロール関連ステロイドの高感度一斉分析法を開発し,本邦における先天性ステロール代謝異常症診断システムの確立を目指すことが本研究の目的である。平成20年度は,コレステロール合成系の中間体ステロールおよびコレステロール吸収に関与するステロール(合計25種類)を,ピコリン酸で誘導体化し,LC-MSIMSのpositive ESIモードにて高感度分析する方法を開発した。本法による最小検出感度は1pg未満であり,わずか1μLの血清量でこれらすべてのステロールを同時定量することを可能にした。健常者の血清1μLを用いた基礎的な検討では,良好な再現性と添加回収率が得られた。また,Smith-Lemli-Opitz症候群,脳腱黄色腫症(Cerebrotendinous xanthomatosis, CTX), Conradi-Hunermann syndrome,シトステロール血症(Sitosterolemia)4疾患の血清各1μLを本法により分析したところ,それぞれの診断マーカーである7-dehydrocholesterol, cholestanol, 8-lathosterol, sitosterolの異常な増加を認め,臨床的にも応用可能であることが確認された。これまでわが国には,先天性ステロール代謝異常症の系統的な生化学診断を行っている施設がなかったが,本分析法の確立により,当センターにおいて今後広く診断を受け入れていく基礎が確立したという点で意義があるものと考えられる。次年度は同時分析可能なステロールの数を拡大し,未知の先天性ステロール代謝異常症発見にも貢献しうるシステムへの発展を目指す。
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