研究概要 |
コレステロール関連ステロイドの高感度一斉分析法を開発し,本邦における先天性ステロール代謝異常症診断システムの確立を目指すことが本研究の目的である。平成20年度までにコレステロール合成系の中間体ステロールおよびコレステロール吸収に関与するステロール(合計25種類)のLC-MS/MSによる高感度分析法を開発したが,平成21年度はさらに,酸化ステロールを中心としたコレステロール異化産物と,神経系に存在するニューロステロイドの高感度分析方法を開発した。コレステロール合成系の中間体ステロールと違って,これらのステロイドの多くは水酸基を2つ以上有する。水酸基のピコリン酸誘導体化はこれらの中性ステロイドの分析感度を著しく高めるが,水酸基が2つ以上存在するとMS/MSスペクトルも複雑になる。従って,今回これらの挙動を4パターンに分類して単純化し(論文投稿中),将来の未知のステロイド探索も視野に入れた一斉分析によるモニタリングイオンの設定をわかりやすくした。以上のようにして,平成21年度は血清1-5μLを用いて分析できるステロイドの種類を約60種類まで増加させることができた(分析条件はステロール用,酸化ステロール用,ニューロステロイド用の3パターン)。一方,平成21年11月には,第51回日本先天代謝異常学会総会において,「HPLC-MS/MSを用いた先天性ステロール代謝異常症一斉診断システムの確立」という演題で発表を行い,これまでの成果を報告すると共に,当施設において先天性ステロール代謝異常症が疑われる患者の血清,組織等を用いた生化学的診断が可能であることを国内の関係者に周知させるための活動を行った。
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