研究概要 |
コレステロール関連ステロイドのLC-MS/MSによる高感度一斉分析法を開発し,本邦における先天性ステロール代謝異常症診断システムの確立を目指すことが本研究の目的である。平成21年度までに3つのHPLC分離条件とMS/MSを用いて血清ステロイドを高感度分析する方法を開発し,合計約60種類のコレステロール関連ステロイドを1-5μLのわずかな血清を用いて定量することが可能になった。平成22年度はさらに,平成21年度までに開発された数種類のHPLC分離条件を1つに統合し,C18カラムにアセトニトリル:メタノール:水系の移動層を用いて,全60種類の血清ステロイドを一斉分析できるようにした。また,分析時に使用する重水素標識された内部標準ステロイドのさらなる収集に努め,より信頼度の高い分析方法になるように改良を重ねた。一方,全60ステロイドの一斉分析を試みる過程において,通常のC18カラムでは分離が十分とは言えない異性体ピークも存在した。従って,これらの異性体の正確な定量を必要とする場合の変法として,高極性化合物用のC18aQカラムを使用する新しい方法を開発した。C18aQカラムでステロイドを分析するとピーク形状がやや幅広くなるが,溶出順序がC18カラムとは大きく異なり,異性体の分離にも優れているという特徴を有していた。以上のように,C18カラムに加えて必要に応じてC18aQカラムを用いた確認分析を行うことにより,既知の先天性ステロール代謝異常症の診断はもちろん,未知の先天性ステロール代謝異常症および後天性のステロール代謝異常疾患の診断・病態解析にも応用可能な分析システムが確立された。
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