研究概要 |
本邦の周産期死亡率(4.2人/1000人、2008)は世界で最も低い水準であるが、西暦2100年には総人口は現在の3分の1に減少する。所属するWHOや関連会議の早産率報告では、アフリカ30%弱、米国12.5%、日本5.8%と、本邦の早産率は低水準にあるものの増加傾向にあり「次世代の疲弊化」が進んでいる。妊娠中期以降の流早産の約半数は細菌感染や胎盤炎症が原因とされ、早産合併症である慢性肺疾患や神経系障害は生涯に渡るため、その対策は医療経済上も重要である。 新生児慢性肺疾患を引起す感染性早産の起因微生物については、病理的な絨毛膜羊膜炎(CAM)との関連において不明な点が多かった。マイコプラズマ科ウレアプラズマ属細菌に着目した結果、わが国の早産に関連してウレアプラズマがCAMの発生の独立したリスクファクター(OR, 11.27)であること、病理的にウレアプラズマ感染胎盤特異的な二層性好中球浸潤を見出した。これまでの我々の臨床検体を用いた解析で、ウレアプラズマは外来受診患者の膣培養の3-4割から分離され、すでに国内において常在化していると考えられた。また、9ペアの解析から、パートナー間でのウレアプラズマ培養陽性率は(8/9)であり、ピンポン感染が極めて高いと考えられた。同一患者の膣内と尿中ウレアプラズマ陽性率は、ほぼ一致していた(一致率83%、40/48例)ことから、女性泌尿生殖器内に広汎な同時感染が起こっていることが推測された。 さらにLPS誘導性早産モデルマウスにおいて、ヒトチオレドキシン1の予防的投与が早産率を減少させ、また、母獣の血清サイトカイン値を抑制することを見出した。早産および合併症である新生児慢性肺疾患予防の新たな治療として期待される結果であった。
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