研究課題/領域番号 |
20591313
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
六戸 大樹 弘前大学, 医学部・附属病院, 医員 (50436036)
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研究分担者 |
中野 創 弘前大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (90281922)
松崎 康司 弘前大学, 医学部・附属病院, 講師 (50322946)
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キーワード | 癌 / シグナル伝達 / 分子生物学 / MAPキナーゼ / RNAi / 細胞増殖 |
研究概要 |
Rafキナーゼ抑制蛋白(RKIP)は古典的MAPキナーゼ経路を抑制する蛋白であり、近年その抗腫瘍効果が注目されている。そこで、我々は皮膚有棘細胞癌(SCC)におけるRKIPの機能に着目した。はじめに細胞内でのRKIPの発現量を任意に調節するために、Tetシステムを用いてベクターを構築した。作製したベクターを、SCC由来の培養細胞株であるHSC-1およびA431に導入し、テトラサイクリン(TC)を添加することにより、細胞内RKIP発現を著明に増強できることを確認した。さらにこれらの細胞株でTC調節性RKIP安定発現株を樹立し、以後の実験に用いた。まず、RKIPを発現増加させたが、古典的MAPキナーゼ経路の下流にあるERKの活性化(リン酸化)は抑制されず、次に、増殖因子であるEGFで刺激した場合にも抑制効果はみられなかった。そこで、細胞内のRKIP発現量を減少させて検討するため、RKIP siRNAを細胞内に導入した。その結果、RKIP発現量は十分に減少したが、ERKのリン酸化レベルはコントロールと比較し有意な変化はみられなかった。次に、HSC-1細胞でRKIP発現量を増加あるいは減少させて、細胞増殖能への影響を検討した。RKIPを増加させても細胞増殖は抑制されず、逆にRKIPを減少させた場合も細胞増殖は亢進しなかった。以上の結果より、培養細胞レベルでは、皮膚SCCにおいてRKIPによる古典的MAPキナーゼ経路抑制効果および細胞増殖抑制効果は確認されなかった。今後は、樹立したRKIP安定発現SCC株を用いて、また、SCC患者標本の免疫組織化学染色を行って、RKIPがSCCの浸潤能、転移能、および分化マーカー発現に与える影響を検討する。
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