研究概要 |
非小細胞性肺癌等の上皮系腫瘍の治療薬である,上皮成長因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(epidermal growth factor receptor tyrosine kinase inhibitor:EGFR-TKI)は60~98%の確率でざ瘡様丘疹をはじめとしたさまざまな薬疹を引き起こすが,その発症機序は未解明のままである。この薬疹はEGFR-TKIに対するアレルギーが関与するのでなく,表皮基底層と外毛根鞘のケラチノサイト(KC)にEGFRが多く発現することから,EGFR-TKIのKCに対する直接作用が関与していると予測されている。しかし,EGFRシグナルを阻害するとどのようなシグナル伝達がKCにもたらされるかといった分子レベルの研究報告は今までにない。本研究はこの薬疹の病態を明らかにすることにある。本年度得られた結果を述べる。I. NHEKとHSC-1とHaCaTではEGFR-TKIによりIL-1R2が低下してCCL2とCCL5が分泌されることを遺伝子レベル、タンパク質レベルで確認した。さらに、CCL2とCCL5の分泌はIL-1添加により増強されることを確認した。II. 免疫組織化学法にて本薬疹部の表皮において、CCL2とCCL5が上昇していることを確認した。本薬疹の特徴的病理所見の1つに好中球の浸潤がある。無菌性の好中球浸潤はIL-1シグナルが重要であることが知られている。本研究にて得られた知見の重要性は、IL-1シグナルを抑制することが本薬疹の治療標的となりうることをはじめて明らかにしたことにある。
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