研究概要 |
強皮症患者において、皮膚硬化範囲の比較的狭いタイプに見出される自己抗体である抗セントロメア抗体は診断において重要な血清学的マーカーとなっている。その対応抗原である染色体セントロメア領域は数多くの蛋白による複合体から成ることがわかってきた。従来から判明しているセントロメアの主要自己抗原はセントロメア蛋白(CENP)-A,-B,-Cの3種類の他に、近年のプロテオミクス解析により新規に同定されたセントロメア蛋白に対する反応性を、多数の自己免疫疾患患者血清や健常人血清について検討した。CENP-H,-I,-K,-L,-M,-N,-O,-T,-Uの9種類について、大腸菌発現リコンビナント蛋白を精製し、患者抗セントロメア抗体の反応をウエスタンブロットやELISA法により調べたところ、CENP-0に対して数例の陽性例が見つかったものの、他のCENPに対する自己抗体は殆ど検出されなかった。 次に、自己抗原であるセントロメア蛋白と非自己抗原であるセントロメア抗原との差別化をもたらす細胞刺激を解明するために、各種CENPの遺伝子を導入した培養細胞を用いて、各種薬剤による小胞体ストレス誘導や紫外線刺激によるアポトーシス誘導時におけるCENPの局在と発現の変化を蛍光顕微鏡により、また抗体を所有するCENPに関しては遺伝子未導入の培養細胞を用いた蛍光抗体法により調べたが、自己抗原群と非自己抗原群を明らかに差別化するような因子は同定できなかった。そこで、次にCENP-Bと特異的に結合する配列を持ったアルフォイドDNAと、その配列を持たないアルフォイドDNAの血清中の存在比をRT-PCRを用い抗体陽性者と陰性者で調べたところ、抗体陽性者に結合配列を持ったDNAが陰性者に比べて多く存在する傾向を認めた。今後、症例数を増やして検討を重ね、抗体産生に重要な因子を探っていきたい。
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