研究課題/領域番号 |
20591324
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
森 俊雄 奈良県立医科大学, 医学部, 研究教授 (10115280)
|
研究分担者 |
岩本 顕聡 奈良県立医科大学, 医学部, 博士研究員 (20448773)
|
キーワード | XPD / 色素性乾皮症 / 硫黄欠乏性毛髪発育異常症 / 紫外線 / ピリミジンニ量体 / ヌクレオチド除去修復 / 皮膚発がん / TFIIH |
研究概要 |
XPD遺伝子変異を共通する色素性乾皮症D群(XP-D)患者と硫黄欠乏性毛髪発育異常症(TTD)患者で紫外線皮膚発がん感受性に大差が生じる機序を解明することを目的とした。昨年度までの研究で、XP-D細胞とTTD細胞は共にTFIIHへりカーゼ活性の低下、およびピリミジンニ量体型紫外線損傷の修復欠損を示すことから、DNA修復は発がん感受性差に関係しないことが示唆された。一方、TTD細胞特異的な現象として、TFIIHの細胞内濃度低下および損傷部位へのTFIIH集積量低下が生じた。最近の論文で、TFIIHは甲状腺ホルモン標的遺伝子においてcoactivator作用をもち、TFIIH濃度低下は主に標的遺伝子の発現低下を導くことが示された。この結果は、TTD患者の低発がん性は、紫外線でinitiationされた細胞がホルモン標的遺伝子などの発現低下のために増殖能を落とすことが原因であることを示唆するので、今年度はこの可能性について検討した。XP-DおよびTTD細胞に50%致死線量の紫外線を照射後培養し、細胞数が回復した時点で再び同線量の紫外線を照射して培養した。こうしてinitiationされてpromotion過程にあるモデル細胞を作製した。これらの細胞について、牛胎児血清濃度を低下させた培地(10%~0.1%)で4目間の増殖能を調べた結果、TTD細胞は正常およびXP-D細胞に比べ増殖能が低下する結果を得た。この細胞増殖実験を低酸素(2%)下で行った場合も、同様の結果を得た。しかし、新たに5J/m2の同一紫外線量を照射した細胞モデルで増殖実験を行った結果、正常酸素の場合も、低酸素の場合も、XP-D細胞とTTD細胞間で有意な増殖差が観察されなかった。それ故、現時点ではTTD患者の低発がん性を増殖能の低下と結びつけられる証拠は限定的であり、さらなる検証実験が必要である。
|