表皮-真皮接合に重要な役割を果たしている表皮基底膜は多くの分子から構成されることが知られており、これらの分子が相互作用することにより、表皮基底膜がその機能を発揮している。また、各種基底膜構成成分の遺伝的欠損、あるいはこれらの構成成分に対する自己抗体の産生により表皮-真皮接合機能が障害され、水疱症が生じることが知られている。表皮基底膜の生物学的な意義・役割の解明、水疱症の病態生理の解明のためには、in vivoにおける表皮基底膜構成成分同士の相互作用を明らかにすることが必要である。本研究では、表皮基底膜構成成分の1つであり、基底板に局在しているラミニン332(旧・ラミニン5)が欠損したヒト皮膚組織を基質とした免疫電顕を実施し、他の表皮基底膜構成成分の存在様式を明らかにし、それら構成成分間の相互作用を明らかにしようとするものである。 ラミニン332欠損患者(Herlitz致死型接合部型表皮水疱症およびnon-Herlitz致死型接合部型表皮水疱症患者)から採取した皮膚組織を凍結固定・凍結置換することにより作製した免疫電顕用ブロックから超博切片を作製し、post-embedding金コロイド免疫電顕に供した。その結果、Herlitz致死型接合部型表皮水疱症患者皮膚では、表皮基底細胞と基底板を直接繋いでいるXVII型コラーゲン(180kD類天疱瘡抗原)のC末端(基底板側)の分布が、正常に比べて、基底細胞側に寄っていることが示唆された。なお、non-Herlitz致死型接合部型表皮水疱症患者皮膚では、基底板等の形態が明瞭でなく、また金コロイド標識のバックグランドも認められていることから、明確な結果を得るには至らなかった。以上の結果から、in vivoにおいて、ラミニン332とXVII型コラーゲンが何らかの相互作用をしている可能性が示唆された。
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