近年開発された水疱誘導能を有する抗デスモグレイン1モノクローナル抗体を用いて、その認識するエピトープの局在の解析、抗体投与後の皮膚の変化を形態学的に詳細に解析することにより落葉状天疱瘡(PF)の水疱発症機序を解明することを目的としている。昨年度の研究により、正常ヒト皮膚を培養液中で器官培養する条件下でモノクローナル抗体を皮内投与すると注射10時間後、一部の検体では顆粒層レベルで水疱を形成し始め、注射後18時間後以降はすべての標本で顆粒層に水疱形成が認められた。蛍光抗体法にてIgGは注入後約0.5時間で表皮中層まで、また1.5時間後には表皮上層顆粒層レベルに達していることが確認でさている。この系を用いて抗体投与2時間後の皮膚に対しpostembedding免疫電顕法を施行した。すなわち、抗体を局注した皮膚を-190℃の液体プロパンにて急速凍結固定し、-80℃アセトンにて凍結置換した後、Lowicryl樹脂に包埋、重合し、超薄切片を作成、金コロイド標識抗体を用いてin vivoで沈着したモノクローナル抗体を免疫染色し、透過型電子顕微鏡にて観察した。病原性を持たない抗体は表皮上層においてデスモソームの接着板の間に結合していることが明らかになった。また、細胞質内にもわずかながら標識が見られた。一方、病原性を有する抗体はデスモソーム内の局在は乏しく、細胞質内での標識がみられた。今後、より条件を整え、また統計的解析を加えることにより、これが有意な変化であるかどうかを確認する予定である。
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