ケラチン14をコードする遺伝子に点突然変異を導入した遺伝子改変マウスを作成するため、まずoverlapping PCRの手法を用いて、ケラチン14遺伝子の125番目のアルギニンをシステインに置換(Arg-125→Cys)した。こうして得られた変異ケラチン14遺伝子および野生型ケラチン14遺伝子をplND/V5-Hisベクターに導入し、さらにAatIIおよびDraIIIを用いて、可能な限りベクターDNA部分を除去した。これらのDNA断片を用いて遺伝子改変マウスを作成し、上記の遺伝子が導入されていることをPCR法により解析した。 pVgRXRベクターには、レチノイドXレセプターとエクデイソン受容体をコードする2個の遺伝子が組み込まれている。レチノイドXレセプターとエクデイソンレセプターより形成されるヘテロダイマーにポナステロンAが結合し、pIND/v5-Hisベクターに存在するエクデイソンリスポンスエレメントに結合することにより、その下流域に組み込まれているWtおよびMut K14の転写が開始される。そこで、遺伝子改変マウスの角化細胞を、ポナステロンAを培養液中に添加し培養中である。plND/v5-Hisベクターから発現される蛋白質にはタグ(His tagおよびV5 tag)が付着しているので、今後の計画として抗V5抗体を用いて、変異ケラチンの発現を免疫組織学的に確認する予定である。その結果、変異ケラチンが発現していることが確認され、また既存のケラチン・ネットワークは球状の形態を取り変異ケラチンと共存していることが予想される。 変異ケラチンの発現により、小胞体シャペロン群やユビキチンリガーゼなどの蛋白の品質管理に関与する分子群が活性化され、やがてアポトーシスが誘導されることが予想される。そこで今後は、これら機能分子群の動態をDNAマイクロアレイ、PCRおよび免疫プロットにより解析する予定である。
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