ケラチン病における蛋白フォールディング異常の全貌を解明し、新規治療法を探索するため、我々は誘導型遺伝子改変マウスを作成し、変異ケラチン凝集塊による蛋白フォールディング異常の分子基盤を解明する。この研究戦略は、これまで掴み所の無かったケラチン病を含むフォールディング病の病態解明と新規治療法の開発に有用であり、この分野における従来の研究を大きく発展させることが予想される。 昨年度までに、overlapping PCRの手法を用いて、変異ケラチン14遺伝子および野生型ケラチン14遺伝子をpIND/V5-Hisベクターに導入し、さらに可能な限りベクターDNA部分を除去した後に、これらのDNA断片を導入した遺伝子改変マウスを作成した。さらに、遺伝子改変マウスの角化細胞を、ポナステロンAを培養液中に添加し培養した。pIND/V5-Hisベクターから発現される蛋白質にはタグ(His tagおよびV5 tag)が付着しているので、抗V5抗体を用いて、変異ケラチンの発現を免疫組織学的に確認した。その結果、変異ケラチンが発現により、既存のケラチン・ネットワークは球状の形態を取らず、またアポトーシスが誘導されてなかった。 そこで今年度は、この原因を解析するため、変異ケラチン14遺伝子および野生型ケラチン14遺伝子を含むDNA断片全長の遺伝子配列を解析したところ、一部に変異が導入されていることが判明し、そのため予想と異なる所見が得られたものと推察される。
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