最近の研究の進歩によりアトピー性皮膚炎や接触性皮膚炎の病態として、表皮のバリア機構破綻という物理生化学的側面と、アレルギーという免疫学的側面があることが明らかになった。特に、アトピー性皮膚炎の免疫学的異常とヘルパーT細胞サブセットのTh1/Th2アンバランス、あるいは最近その存在が明らかとなったTh17の関連性は、アトピー性皮膚炎の病態を解明する上で重要であり、本研究では、最近、第3のThサブセットとして自己免疫疾患やアレルギー疾患への関与が注目されているTh17がアトピー性皮膚炎の病態にどのように関わっているかを個体レベルで明らかにすることを目的とする。昨年度は、RORγ cDNAをCD2プロモーター下流に組み込んだ遺伝子カセットを造血幹細胞に遺伝子導入することよりTh17をドミナントに発現するマウスを樹立し、このマウスはCD4、CD3、IL17によるFACS解析の結果、末梢CD4陽性T細胞の10%程がIL17を産生するTh17細胞であることが明らかとなった。さらに、ハプテン誘導性接触性皮膚炎を、Th17優位性マウス耳介で惹起したところ、予想に反してTh17優位性マウスではコントロールに比してハプテン誘導性接触性皮膚炎の程度が軽度であった。本年度は、この予想に反した接触性皮膚炎の抑制の機序について検討した。その結果、Th17優位性マウスでは、Th17細胞と共にTreg細胞が有意に増加しており、RORγの恒常的発現は、Th17細胞だけでなく、Treg細胞の分化にも関わっていることが示唆された。このTreg細胞の増加により接触性皮膚炎が抑制されたものと考えられた。
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