研究概要 |
水庖性類天庖瘡(Bullous pemphigoid; BP)は高齢者に好発する自己免疫性水庖症の一つである。本疾患は自己抗体が直接細胞の接着を阻害する天庖瘡群と異なり、自己抗体がBP180、特に細胞外ドメインに存在するNC16a領域に結合したあと、補体の活性化が生じ、遊走してきた多核白血球が産生する蛋白分解酵素により基底膜が分解されることにより水庖が形成される。しかしこれだけで本病態がすべて説明できるわけではない。自己抗体結合後に表皮角化細胞と浸潤細胞の間をつなぐ各種サイトカイン/ケモカインの作用の解析などは、新規治療の開発のためにも必要となるものと考えられる。本研究の目的は水庖性類天庖瘡の発症機序-特に自己抗体が結合した後から水庖形成に至る機序-を構造タンパク質、シグナル分子、サイトカイン/ケモカインの3点からのアプローチで解明することである。今回、炎症性サイトカインの1つである、マクロファージ遊走阻止因子(MIF)がBPの発症機序に重要であることが解明された(Asano Y, et al. J Dermatol Sci, 2008)。即ち、BP患者の血清中のMIF値は健常者と比べて有意に高値を示すことが示された。さらに臨床症状の改善に伴い、血清MIF値も正常値近くまで低下することが解明された。BP皮膚病変部の組織を調べたところ、好酸球に強いMIFの発現が確認された。血中好酸球は病状の変化に変動することから、好酸球由来のMIFがBPの病態に重要であることが示唆された。 今後、さらに水庖形成過程で重要な役割を担っていると推測される炎症性サイトカインをターゲットとして、水庖性類天庖瘡の新しい治療法の開発を試みる。
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