三重大学附属病院耳鼻咽喉科では重症のスギ花粉症患者に対して、スギ花粉標準化アレルゲン治療エキスを用いた皮下及び経口の減感作療法を施行し、鼻粘膜・眼症状の改善など良好な結果を得て来た。抑制性T細胞(以下Tregと略する)は、免疫の調節因子として注目されているが、誘導性の抗原特異的Tregに関しての知見はあまり得られていない。申請者らは、この減感作治療が効果的な理由を患者の治療に用いるスギ花粉標準化エキスの投与によりスギ花粉特異的Tregが誘導され、飛散した花粉によるT細胞の反応増殖を抑制しているという可能性を考えた。獲得性Tregの誘導の研究は、花粉症、アトピー性皮膚炎を含めたアレルギー性疾患に於いて治療に貢献できる。 1.スギ花粉標準化アレルゲン治療エキスを用いた皮下及び経口の減感作療法を施行し、良好な結果を得ているスギ花粉症患者からインフォームドコンセント取得後、血液約20mLを採取した。PBMCを精製しIL-10産生抑制性Tリンパ球の割合を経時的に調べた。結果減感作療法試行群では通常の抗アレルギー剤による治療を試行している患者群に比して獲得性Tregの増加を認めた。 2.T細胞レセプターのレパートリーの多様性をspectratypingを用いて解析した;減感作療法施行中の患者由来のTregよりRNAを抽出し、40種類のT細胞レセプターβ鎖可変部領域特異的なprimer pairを用いRT-PCR法を施行、genescanソフトウエアーにより解析した。TregのT細胞レセプターのレパートリーは多様性を有していた。
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