研究概要 |
1. 成長期への移行や創傷治癒には毛隆起(Bulge area)に存在する幹細胞が間葉系の毛乳頭細胞や真皮繊維芽細胞(いわゆる幹細胞のニッチ)からのシグナルにより活性化され再生に必要な娘細胞を供給すると考えられている。最近毛包幹細胞のみを単離する方法が確立され特異的な遺伝子群が明らかにされたが、我々はLRIG1という1回膜貫通型蛋白が毛隆起(Bulge area)の直上にあるjunctional zoneに局在する角化幹細胞に特異的に発現していることを明らかにした(Cell Stem Cell.4 : 427-439, 2009)。LRIG1はEGFレセプターを介するシグナルを負に制御しMycの発現を抑制し、表皮と脂腺の恒常性を維持するために機能している。さらにLRIG1のノックアウトマウスではWnt-β-catenin経路が恒常的に活性化し表皮より毛包の異所性新生を認めた。LRIG1はEGFレセプター以外にMetを介するシグナルも負に制御しているが、その細胞外ドメインはADAMプロテアーゼにより切断され、パラクライン機構で細胞増殖を制御していることも明らかにした(Exp Cell Res.317 : 504-512, 2011)。 2. ARA55/hic-5は毛乳頭細胞において男性ホルモンレセプター活性を増強する共役因子であるが(J Invest Dermatol.127 : 2302-2306, 2007)、ケロイドの線維芽細胞でも強発現していることを見出し、ステロイドホルモンシグナル経路ではなく、TGF-β-Smad経路を活性化しコラーゲン合成を促進することを明らかにした(J Dermatol Sci.58 : 152-154, 2010)。
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