ヒト皮膚リンパ管内皮細胞に対するモノクローナル抗体を作製した。リンパ管内皮細胞の増殖と維持には、多彩な分泌型増殖因子が関与する。この知見は、研究代表者が行った複数の研究課題から明らかとなったことである。しかし、リンパ管内皮細胞の増殖やリンパ管新生に対して、膜型増殖因子の働きは全く不明であり、その制御機構の解明は今後極めて重要である。本研究課題では、リンパ管内皮細胞における膜型増殖因子の作用を転写レベルで検討することにあり、標的蛋白質に対する特異抗体を作製する必要がある。そこで、大腸菌系を用いて膜型増殖因子のペプチドを発現し、ラットに免疫した。3週後、マウス・ミエローマ細胞株SP2/0と共に細胞融合を行い、ハイブリドーマを作成した。HAT selectionにより陽性クローンを単離し、モノクローナル抗体を樹立した。抗体認識蛋白が細胞膜に局在することを確認すべく、リンパ管内皮細胞を用いた細胞染色を施行し、膜パターンを同定した。コントロールには、リンパ管内皮細胞の膜蛋白質を免疫することにより樹立したモノクローナル抗体を用いた。次に、リンパ管内皮細胞をvascular endothelial growth factor(VEGF)-Aで刺激すると、膜蛋白は膜型分解酵素により消化された。そこで現在、膜増殖因子がリンパ管内皮細胞膜上で消化されることを検討し、さらに細胞内局在を同定すべく評価を行っている。
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