アトピー性皮膚炎(AD)の痒みは、一般に抗ヒスタミン薬に抵抗性を示す。この原因の1つに、表皮内神経線維の増生による痒み閾値の低下が推定される。しかし、神経線維が表皮内へ侵入するためには、表皮-真皮境界部に位置する基底膜を通過する必要がある。本研究では、基底膜成分を分解するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)に着眼し、神経線維の基底膜侵入メカニズムの解明を目指した。我々が考案したユニークなボイデンチャンバーを用いた後根神経節(DRG)細胞培養系により、NGFがDRG細胞に作用することでMMP-2遺伝子の発現が誘導されること、MMP-2蛋白及びその活性が神経線維の成長円錐の細胞膜上に局在することが明らかとなった。さらに、proMMP-2の活性化には、MT5-MMP、TIMP-2が関与することが示唆された。また、MMP-2発現は、Sema3AおよびMMP-2自身のECM基質成分によって変調した。このような複雑な制御下で、NGF誘導性膜結合型MMP-2が微小ドリルとして機能することで基底膜を局所的に分解し、ADにおける神経線維の基底膜侵入を可能にすることが示唆された。
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