研究課題
本年度は、アトピー性皮膚炎における真皮内神経線維の増生機序の解明を目指した。アトピー性皮膚炎では、NGFの作用による真皮内知覚神経線維の増生が報告されている。真皮で神経線維が伸長し、増生するためには、主にI型、III型コラーゲンで構成されている真皮細胞外マトリックスを分解する必要がある。本研究ではボイデンチヤンバーを用いたユニークな後根神経節(DRG)細胞培養系により、細胞外マトリックス(特に、間質コラーゲン)を分解するマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)に着眼し、知覚神経線維の真皮内伸長・増生機序の解明を目指した。その結果、NGFはDRG細胞での分泌型MMP-8の発現を増加させ、I型コラーゲンゲル内への神経線維の侵入を可能にすることが示唆された。さらに、DRG細胞培養系にNGFと共に神経反発因子であるSemaphorin 3A(Sema3A)を添加すると、NGF誘導性MMP-8の発現が抑制された。また、MMP-8の発現はそれ自身の細胞外マトリックス(ECM)基質成分で亢進した。このような複雑な制御下で、NGF誘導性MMP-8が神経線維から分泌され、真皮の主要マトリックス成分であるコラーゲン分子を分解することで、アトピー性皮膚炎における真皮内神経線維の増生に関与することが示唆された。
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