自然免疫ではTOLL様受容体(TLR)およびそのシグナル伝達経路の解明が進んでいるが、創傷治癒におけるTLRの関与は明らかになっていない。我々はTLRの重要なアダプター分子であるMyd88に着目したが、Myd88欠損マウスにおける創傷治癒過程において有意な変化は見いだせなかった(negative data)。一方、すでに報告したように、NFκbを調節する遺伝子であるPDLIM2については、その遺伝子欠損マウスを用いた全層皮膚欠損モデルと、分離した線維芽細胞において有意な実験結果を得た。平成22年度はTRIF欠損マウスとMyD88/TRIF重欠損マウスについて実験を予定したが、動物の供給が十分でなく、この点については実験結果を得ることができなかった。 ブレオマイシン皮内注射による皮膚線維化モデルにおけるピルフェニドン(pirfenidone)の線維化抑制作用についてさらに実験を行った。複数のケロイド由来線維芽細胞を用いてコラーゲンゲル収縮能を解析した。ピルフェニドンはコラーゲンゲル収縮を抑制した。また、ピルフェニドン前処置によりTGFβ1依存性の線維芽細胞のαSMAの遺伝子発現は抑制された。しかし、TGFβ1とピルフェニドンの同時投与や、ピルフェニドン単独ではαSMAの遺伝子発現は抑制されなかった。 創傷治癒過程におけるfibroblast growth factor(FGF)-22の発現については、ヘアレスマウス背部皮膚の全層皮膚欠損創のFGF-22の局在だけでなく、real time PCRによるFGF-22 mRNAの発現解析を行った。その結果、創縁部組織のFGF-22 mRNA発現量は健常部組織に比べ有意に増加していた。
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