研究概要 |
本研究は酵素的脱イミノ化によるS100A3の機能変換とその生理機能を構造生物学及び分子生理学的手法等を用いて明らかにすることを目的とする。本年度は、S100A3の自己蛍光(励起光長295nm,発光長340nm)を指標とした蛍光分光光学法により、酵素的脱イミノ化S100A3 (R51が脱イミノ化)及び同モデル化変異S100A3(R3A/R22A/R51A/R77A)のCa^<2+>結合能解析並びに4量体化S100A3の可逆性や安定性について解析を行った。その結果、S100A3はR51の特異的脱イミノ化により、そのCa^<2+>結合能が約4倍高まること(Kd=13mMから3.5mMに変化)すること、また安定な4量体化へと移行することが明らかとなった。加えて、脱イミノ化を模倣するために作製したArg残基変異体のうちR51Aもほぼ同様な変化を示すことが判った。このような結果からS100A3は毛嚢において生合成された後、同組織に局在する脱イミノ化酵素によりR51が脱イミノ化を受け陽電荷をなくすことにより、EFハンド領域の構造が変化し、本来のCa^<2+>結合蛋白質として機能すること、またその際4量体への移行が伴うことが明らかとなった。また、高エネルギー加速器研究機構のPF施設を利用し、放射光小角散乱法によるS100A3の脱イミノ化に伴う分子構造変化の解析についても解析した。その結果、S100A3が脱イミノ化されることにより、分子形状が変化して、四量体化へ移行していることが確認できた。
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