研究概要 |
トランスグルタミナーゼ1(TGM1)の変異に起因する非水疱型先天性魚鱗癬様紅皮症において見いだされる変異のなかで,アルギニン142をコードするコドンの変異はフィンランドにおいて高頻度に認められ,重症の葉状魚鱗癬の表現型をとることが多い.変異はアルギニンからシステイン,フェニルアラニンあるいは,ヒスチジンへの変異が報告されているが,それらの異常によるTGMの持つ酵素活性や局在の異常ついては詳細は不明である.本年度は,これらの変異がTGM1の細胞内局在に及ぼす影響について,角化細胞への一過性のトランスフェクションにより解析した.これらのヒト変異TGM1 cDNAにFRAGをコードする配列を3'側に付加し,CMVプロモーターの制御下に発現するプラスミドを構築し,培養ヒト角化細胞に導入した.その結果,それぞれ異なる細胞内局在を示すことが明らかになった.これらのプラスミドを発現した角化細胞におけるTGM,その他の活性については現在検討中である.組織切片上でTGM1活性を評価する場合,従来基質として用いられているダンシルカダベリンは,感度や特異性が低い.そこで,TGM1の特異的基質を用いて組織切片上でTGM1活性を評価する基質を名古屋大学人見らと共同で検討した.ファージディスプレイ法によるアッセイからTGM1に特異的なアミノ酸配列を持つペプチドを選び,それをダンシルクロライドで標識して野生型TGM1およびTGM1欠損マウス皮膚と反応させ,表皮における蛍光を観察した.その結果,特定のペプチドを用いた場合,より正確にTGM1活性を判別できた.
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