先天性魚鱗癬様紅皮症/葉状魚鱗癬に高頻度に認められるトランスグルタミナーゼ1(TGM1)変異のなかで、アルギニン142がシステインに変異する異常(R142C)は重症の魚鱗癬を発症することが知られている。そのメカニズムを解明する目的で本研究課題ではTGM1にR142C変異をもつマウスの作成を実施し、遺伝子発現、タンパク発現、形態的観察を進めてきた。Rl42C変異をホモにもつマウスは肉眼的に、TGM1ノックアウトマウスと同様の所見を示し、新生仔期に致死的であった。このマウス皮膚におけるTGMファミリー遺伝子の発現を解析したところ、TGM1を含め、発現量に差は見られなかった。柊らが作成したマウスTGM1抗体を用いた蛍光抗体法では組織におけるTGM1の発現は見られなかった。この抗体を用いた場合、Western blottingではマウスTGM1は検出できず、R142C変異タンパクがこのマウス皮膚で発現しているのかどうかについては、現在、さまざまなTGM1抗体を用いて検討を進めている。一方、Halo-tagをもつR142C変異ヒトおよびマウスTGM1 cDNAを培養角化細胞に導入し、TMRでtagをラベルした結果、野生型TGM1に比較してR142C変異タンパクは細胞内で凝集塊を形成することが判明した。以上の結果から、R142C変異をもつマウスでは変異による酵素タンパクの高次構造の形成障害に加え細胞内凝集塊形成による膜移行め障害によってTGM1が機能不全に陥り、TGM1ノックアウトマウスに似た表現型を示すことが示唆された。
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