統合失調症の治療においては、薬物療法がその中心的役割を担っている。しかし、これらの薬剤による治療に反応せず、慢性化する症例が存在しており、こうした症例では、症状による著しい社会機能低下が持続し、長期間の入院を強いられることも少なくない。したがって、治療初期の適切な薬剤選択、用量設定を可能とする、治療反応性の予測マーカーの獲得が期待される。一方、体重増加、糖尿病、性機能障害など症例のQOLに直結する副作用は、治療中断につながる重大な問題であり、こうした副作用による治療中断もまた、統合失調症の病状悪化や再燃をもたらす。したがって、これらの副作用出現を予測する生物学的マーカーの確立も重要であると考えられる。 平成21年度は、(1)新規抗精神病薬であるペロスピロンおよびその代謝物の血中濃度とプロラクチン値との関係について報告した。(2)健常者140名のプロラクチン値を利用し、最も重要な抗精神病薬の標的受容体であるドパミンD2受容体の機能多型を同定し報告した。(3)各新規抗精神病薬群(オランザピン群60例、リスペリドン40例、クエチアピン25例、アリピプラゾール20例)およびコントロール群100例における75gOGTTデータを解析し、オランザピン群で糖負荷後の高インスリン血症を来たしやすいという結果を得た(論文執筆中)。
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