第2世代抗精神病薬(SGA)には、糖脂質代謝異常、心電図QT延長、高prolactin(PRL)血症などの副作用があり、これら副作用出現の予測・予防は精神症状の改善と同様に重要である。しかし、こうした副作用の発症メカニズムは明らかになっていない。本研究では今年度に以下のことを明らかにした。 1.健常者での血中PRL値と関係するドパミン受容体遺伝子変異を同定し、SGAによる高PRL血症を予測する候補因子を明らかにした。 2.抗精神病薬投与は、特に夜間のQT延長をもたらす可能性を示し、SGA投与によるQT延長の評価は日中のQT時間測定では不十分であることを示した。 3.Risperidone薬物動態には個体差が存在し、この個体差と性差が高PRL血症に関係していた。 4.Perospironeの薬物動態には大きな個体差が存在し、この個体差は高PRL発症と関係していた。 5.AripiprazoleによるQT延長作用に用量依存性が認められた。 6.糖脂質代謝異常と関係しているアディポカインについての検討では、同一個体においてOlanzapineからaripiprazoleへの置換後、アディポネクチン及びレプチン値は上昇し、TNF-αは低下した。これらの結果は、olanzapineによるは糖脂質代謝異常発症のメカニズムと関係しているかもしれない。 7.日本人統合失調症患者群450名と健常コントロール群200名との間で各種アディポカイン値を比較した所、SGA群でアディポネクチン濃度が低下し、レプチン濃度は上昇していた。 8.糖尿病関連遺伝子であるgastrolntestinal hormones including glucose-dependent insuhnotropic polypeptide (GIP)受容体多型がolanzapineによる耐糖能異常と関連していた。
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