前年度は、小脳にヒストンジアセチラーゼ(HDAC)阻害薬であるバルプロ酸をラット新生児8日目に腹腔内投与したところ、小脳の外顆粒細胞層に限局してアポトーシスが生じることを見出し、その用量依存性と感受性のある細胞の細胞周期について検討した。この成果は本年度に学会発表と投稿準備を進めている。 バルプロ酸は白血病治療の補助に用いられ始めているように、未分化細胞にのみアポトーシスを誘導する。このようなHDAC阻害作用の解明はバルプロ酸類似の化合物の長期投与がどのようなリスクを持ち、一方で成熟した細胞にどのような有用な作用をもたらすか予見できる点で意義がある。 ヒストンの修飾作用単独では、てんかん原性の変化や組織学的変化は説明できないと思われる。しかし、てんかんの発症における異常な遺伝子発現の異常に関与する可能性はあり、特に神経回路の発達段階にどのような影響があるか、その標的分子を解明することはてんかん難治化を防ぐという意味において重要である。
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